ユウノ竹工房 岡悠 Interview

こんにちは。感動やワクワクなど、日常にイロドリを与えてくれるものを探し奔走しているNoRi-Ko☆です。

この『気になるアレを深掘り』は、そんな私が気になった人やモノを取材し、ご紹介するコーナーです。今回のテーマは竹細工(*‘∀‘)

みなさんは、竹で作られたお弁当箱をご存知ですか?

子供のころ、お出かけの際に祖母が入れてくれたお弁当が、竹で編まれたものに綺麗に詰められていたことを覚えています。

通気性も良く衛生的。主流であるプラスチック製のものよりとても軽くて丈夫。何といっても、美しい編み目の模様です! 見ているだけで心が癒されませんか?

そんな竹細工はどのように作られているのでしょうか。

竹細工の種類はいくつかあるようですが、私がご紹介したいのは、竹で編みあげられたものです。

繊細な模様が印象的な竹細工。制作過程では、かなり力を必要とする場面もあるようです。そんな竹細工の世界に小柄で華奢な女性の竹細工職人さんがいると聞き、取材をさせていただきました!

京都の南に位置する自然豊かなお茶の町、宇治田原町で3人の子供たちを育てながら「ユウノ竹工房」を営む北海道出身の岡悠(おか ゆう)さんです。

    

2020.12.4

目次

京都竹細工職人 岡悠(おか ゆう)さん インタビュー

小柄な岡さん。見た目とは裏腹に快活かつ力強い語り口で、一つひとつの言葉からブレない信念が感じ取れる

         

きっかけ

私が竹細工に興味をもったのは2004年、京都伝統工芸専門学校(現・京都伝統工芸大学校)の竹工芸科に入学してからでした。

(竹細工は)生活のなかで普通に使ってもらえるものであってほしいです。だって、竹細工って見てるだけで和むじゃないですか!

自らが作った茶こしを使ってお茶を淹れながら、竹細工に対する想いについて語る岡さん。お弁当箱をはじめ、茶こしや笊(ざる)などは納品5年待ちの逸品。宇治田原町のふるさと納税でも人気の返礼品となっている

     

ちゃんとしたきっかけはよく覚えていないのですが、『編む・組む』ことが大好きでした。『NHKおしゃれ工房』(雑誌)で、チラシを丸めて棒状の物を作り、それでゴミ箱を編むというのがあったんですよ。それを小学校1年生か2年生のころに一人で読んで全部真似をしたことがあったんです。結局、その時はうまくできなかったんですけどね(笑)

でも、すごくやってみようという気持ちが強かったんです。編んでいくことが、すごくやってみたかったんですよ。それを今でも鮮明に覚えています。

京都に来たのは、学校が京都にあったからです。

中学生のころから、伝統工芸に興味がありました。当時、小樽にも職人学校があったのですが、自分がやりたいことと学校の特色が合わないことがわかったので、全国の伝統工芸が学べる学校を探したんです。

進路に迷っていた時に、札幌の図書館で『淡交』という雑誌を見かけました。その裏にあった京都伝統工芸専門学校の広告がふと目につき、これだ!と思い、お金を貯めて行こうと決めました。

職人になるまで

盛り篭(かご)・お弁当箱・笊(ざる)。使い込むほどにあじが出て、様々な表情を楽しむことができる

        

学校を出れば、引く手あまたで就職できると思っていたのですが、まったくそうではなくて(笑)。ご縁があって、石田竹美斎(石田正一)氏のもとで5年間内弟子としてお世話になりました。

昔ながらの師匠と弟子の関係でしたね。『一を聞いて十を知れ』、『技は見て盗め』という世界。一から手解きを受けるという甘いものではありませんでした。

修業時代を語る岡さん。修行に苦しみながらも切磋琢磨した時代を乗り越えたからこそ、繊細かつ力強い作品を創りだすことができるのかもしれない

                                   

ひとりで始めたころはうまくいかなかったんです。でも、展示会に出展させてもらってから注文がくるようになりました。

一般の方から笊(ざる)などの注文が多いですね。お客さんの細かい希望に合わせて試行錯誤を繰り返します。この前は、食パンが2斤入るものを作ってほしいと言われて、様々な工夫をして作りました。

製作

自宅にある、大きな窓の日当たりの良い場所で、カンカン・パキッと乾いた音を立てて作業が始まる。なた・小刀・せん引き・幅引き・千枚通し。主に使う道具はこの5種類

        

本当に、道具としていつも使うのはこのくらいです。40センチくらいの長さにした竹を割っていくと、3ミリの厚さのもので、およそ60本の編むための材料の竹がとれます。それを使って作品を編んでいきます。

昔から、竹割り3年と言われています。割るくらいなら誰でもできるんですが、必要な薄さに割るという作業は難しいんです。

竹は、京都の東山にある竹屋さんから国産の真竹(まだけ)を仕入れています。だいたい4メートルあるんですが、それを積めるトラックで竹屋さんに運んできてもらいます。京都の竹工芸は全部分業なんです。昔から、竹を買ってくる人、油抜きをする人、編む人、売る人で全部分かれていました。

        

同じ編み方でも、材料の細さが違うと見た目の印象が全然違うので、いろんな幅の材料を組み合わせていきます。

今後の課題

今は、どの伝統工芸も後継者不足に悩まされています。昔は、弟子入りなどが当たり前だったけれど、うつりゆく時代とともに変わらなければいけないと思っています。若い人たちが興味を持ってくれたらいいんですが、難しいですね。

私も最初からはうまくいかなかったし、20歳から10年くらいは大変でした。しかし、今の私がやるべきことは、変えられない過去を嘆くよりも、これからの人たちをどうにかしてあげる体制づくりをすべきじゃないかと思うんですよね。もちろん、私の持つ技術も継承していきたいと思っています。

話しながら竹細工を見つめる岡さんの目は、とても楽しげで希望に満ちたものだった

      

取材後記

素晴らしい日本の伝統工芸、竹細工。

昔は、人々の暮らしに寄り添っていたものでした。科学技術の発展や新しい市場の参入により、歴史の片隅に追いやられそうになっています。しかしながら、軽くて丈夫な天然素材の国産竹を使用した竹細工は、環境問題が深刻化している現代において最も注目されるべきものだと感じます。

      

そんななか、岡さんの作品は、竹の機能性と特性を最大限に活かし、何ものにもとらわれない自然体の飾らない美しさで、人々の心を魅了してやみません。

1本の丸い竹をなたで縦にパカーンと割り、それをさらに薄くして1本の細い材料にしていく。その手さばきは一切の迷いがなく、ずっと見ていたいと思うほどです。

        

伝統を大切にしつつ「化学製品にないぬくもり」や「自然素材の安心感と機能性」など、手にとる人のベネフィットを十分に意識した岡さんの作品は、納品5年待ちという現状をつくりだすまでになっています。

     

計算しつくされた美の結晶は、機能性は勿論のこと、インテリアとしても申し分のないものです。

    

個人的には、異素材とのタイアップなども、面白い作品ができるのではないかと大変興味があります。竹の良さを活かしつつ異素材と交わるような作品が誕生したら、ワクワクしませんか?

      

日常で使ううちに、あめ色のようになって風格が出てくるという竹細工の日用品。大切に使うと10年くらいは使用可能だということでした。ワークショップも開催されているようなので、興味のある方は足を運ばれてはいかがでしょうか?

 

photo by

勝谷 聡一(K-design)  

 

『ユウノ竹工房 岡悠interview』ギャラリー

 

 ユウノ竹工房 http://younotake.com/contact